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マンションや戸建て住宅等 建物を賃貸する場面での改正民法の注意点

賃貸人の立場で

債権法改正に伴う「賃貸人」の責任
民法559条について
民法559条は、「この節の規定(売買に関する規定)は、売買以外の有償契約(賃貸借契約等)について準用する。」と規定しています。
そうすると、562条等契約不適合責任に関する規程が賃貸借契約に適用されることになります。
改正債権法562条を賃貸借契約として読み替えると、 賃貸借の目的物である引き渡された建物について、契約成立前後を問わず、種類、品質又は数量(面積)に関して契約の内容に適合しないものであるときは、賃借人は、賃貸人に対し、契約不適合に売主に故意過失がなくとも、目的物たる建物の修補(契約内容に適合するための工事)・不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます。
しかも、契約内容に適合する建物を引き渡すことや契約内容に適合するように工事することが、全くもって不可能な場合であっても、賃貸人は、民法416条に基づく広い損害賠償義務を負います(412条の2)。

賃貸人の修繕義務と契約不適合責任
1 民法606条
民法606条は、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」と規定しています。
もちろん、606条は、「単に使用収益できれば良いと言う訳ではなく、契約の定めたように使用収益するのに必要な修繕をする義務」を規定するものです。
2 民法562条
562条は、建物の品質(グレード・防音性能・耐火性耐震性)・面積を含め、賃借人の賃貸人に対する修補(契約内容に適合するための工事)・不足分の引渡しによる履行の追完請求権を認めるもので、それがおよそ契約時から、全くもって不可能な場合であっても、賃貸人は民法416条に基づく広い損害賠償義務を負うと明記します(412条の2)。

宅地建物取引士の重要事項説明と建物賃貸人の責任との関係
契約書に「契約書記載以外の合意は無効である旨明記」しない限り、契約書を作成しても、口頭での合意も契約内容となってしまいます。
宅地建物取引士の説明は、賃貸人の委任を受けてなす場合には、それが賃貸借契約の内容をなす、と認定されるリスクがあります。

宅地建物取引士のミスに起因する賃貸人の責任リスク
そこで、仮に、宅地建物取引士が重要事項説明「等の」際に、賃借人に対し、建物の品質・グレード・防音性快適性・断熱性等について、口頭で、誇大な説明をしてしまった場合、賃借人から「それも賃貸借契約の内容をなす」等と主張され、賃貸人が思わぬ責任を負う「リスク」(裁判でそれが認められるとは限りませんが)があります。

宅地建物取引士(不動産会社)が説明ミスをした場合に賃貸人がトラブルに巻き込まれないために
ご心配がある場合には、弁護士にもご相談ください。

建物管理会社・不動産会社の立場で

建物管理会社・不動産会社及びその役員にとっての、 宅地建物取引士・不動産会社従業員の説明リスクの増大 (不正確ないし誇大な説明、重要事項の説明不足のリスクの増大)
会社が賃貸人や仲介会社・不動産管理会社である場合に、従業員の不正確ないし誇大な説明、重要事項説明書と契約書の矛盾抵触、重要事項説明書の記載ミス(重要事 項説明の前提となる調査の過誤・不足)を見逃せば、担当取締役は、経営判断ルールを適用するまでもなく、善管注意義務違反として、会社に対する損害賠償責任を負うことになりかねません。

宅地建物取引士が重要事項説明ミスをした場合に 不動産会社や役員がトラブルに巻き込まれないための対策
不動産会社や役員がトラブルに巻き込まれないために、
① 従業員の誇大説明防止等について徹底的に教育・監督するとともに、
② 「建物賃貸契約書に記載はないが重要事項説明書に記載されている情 報については、契約内容にはならない」旨の大きい字で明記した契約書ひな形を採用すると、 そのリスクは軽減されます。

賃貸&保証に関する民法改正の注意点

家賃の保証人に関する民法改正
1 保証契約とは
保証契約とは、主債務者(借金をした張本人)が債務の支払をしない場合に、主債務者に代わって支払をすべき義務を負うことを約束する契約のことです。
(1)通常の保証契約とは、
住宅ローンの保証など、契約時に、特定している債務の保証を、通常の保証といいます。
(2)根保証契約とは、
これに対して、例えば、マンションやアパートの賃借人の債務を親族や知人の方が保証する場合、A社の社長が、B社との間で、A社がB社に対して負担する全ての債務をまとめて保証する場合など、保証人となる時には現実にどれだけの金額の債務を保証するのか分からないことがあります。
このように、将来発生する不特定の債務の保証を、根保証といいます。
根保証契約では、保証人になる際には、主債務の金額がわからないため、保証人は、予想外の債務を負うことになりかねませんでした。
そこで、法は、今回の改正も含め、以下のように規定しています。
2 主債務に貸金が含まれる根保証契約
主債務に貸金等債務が含まれる根保証契約(個人貸金等根保証)については、2005年の民法改正で今回の改正よりもさらに厳しい規制がすでにされており(貸金等債務に関する包括根保証の禁止)、この規制は、今回の改正後も変わりません。
3 個人の根保証に関する改正
今回の改正では、①個人貸金等根保証の規律を、全く同じ規律ではありませんが、あらゆる債務に関する個人根保証一般に拡張しました。
具体的には、
(1)上限額の定めのない根保証契約は無効となります!
まず、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は、無効となります(465条の2)。この極度額は、例えば「300万円」というように明確に、書面等により当事者間の合意で定める必要があります。保証人は、極度額の範囲で支払の責任を負います。
例えば、建物賃貸借契約で、大家さんが賃料不払いや原状回復債務に備え根保証契約にするとします。この際、必ず極度額を定めておかなければなりません。極度額の定めずに根保証契約をしてしまうと、せっかく結んだ保証契約が無効となり、保証人に支払を求めることができなくなるので注意が必要です。
(2)一定の事由が生じた場合の元本の確定(その後に発生した債務は、根保証の対象になりません)。
個人根保証契約(例えば賃貸借契約や継続的売買契約等)について、保証人(主債務者は除外されております!)が破産したときや、主債務者又は保証人が死亡したとき、その後に発生する主債務は、根保証の対象外です(465条の4第1項)。
4 事業に係わる債務についての個人保証の特則
改正民法は、事業に係わる債務についての個人保証の特則を設けました。 一般的に個人保証は、断り切れず情で締結されることが多く、保証人となる個人は、リスクを甘くみがちです。また、事業に係わる貸金等債務は、保証人の負担が予想外に重くなる可能性がございます。
そこで、事業に係わる債務(例えば事業用融資)の個人保証について特則を設けております。
(1)公正証書による保証意思の確認
事業のために負担した貸し金等債務に係わる個人保証については、保証契約を結ぶ前(保証契約の締結の日前1箇月以内に作成された)公正証書による保証意思の確認措置をとらない限り、保証契約は無効となります(465条の6~9)。
なお、この意思確認手続は、主債務者の事業と関係の深い、いわゆる経営者保証の場合、不要とされております(465条の9)。業務執行の決定に関与できる人は、情による保証の面が少なく、業務執行の決定に必要な情報を入手することもできますし、保証が経営の規律付けに寄与する面があるからです。
主債務者の事業と関係の深い人は、明文で列挙されおり、
①主債務者が法人である場合、法人の理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する株主等、
②主債務者が個人である場合、共同事業者、主債務者の事業に、現に従事している主債務者の配偶者など、 がこれにあたります。
法改正の段階で、個人事業主の配偶者(共同事業者ではない者)、名目取締役は、経営者に含めるべきではないという議論がありました。意思確認手続が必要かどうかについて疑義がある場合、確認手続にかかる費用は、保証額からすれば些少ですので、債権者は、念のため意思確認手続をとっておくとよいでしょう。
意思確認の方法は、方式が厳格に法定されております(465条の6第2項)。具体的には、保証人候補者が、公証人に対し、主債務・保証債務の内容や保証債務を履行する意思があること等を口授し、公証人に筆記してもらい、保証人候補者がその内容を確認した上で署名押印します。口授内容等については、もう少し詳細な定めがありますので、手続き前に条文を一度ご確認下さい。なお、公証人は、公証役場にいます。
(2)契約締結時の情報提供義務と義務違反の効果
主債務者は、事業のために負担する債務(貸金債務に限らず、賃貸借や売買による債務も含まれます)について他人に個人保証を委託する場合、その人が保証人になって良いかかどうかの判断に資する情報として、
①主債務者の財産や収支の状況、②主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報、を正しく保証人候補者に提供しなければならない義務を負うことになりました(465条の10第1項)。
主債務者がこの義務に違反して、情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた保証人候補者が その事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合、主債務者が情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約の取消をすることができます(465条の10第2項)。
情報提供義務を負っているのは主債務者ですが、債権者は、 主債務者が正しい情報を提供したかどうかを確認しないと、保証契約の取 消しというリスクを負うことになります。債権者は、主債務者が提供した 情報内容と保証人候補者が提供された情報内容に齟齬がないかを確認で きる方策を講じておくことが必要となります。
5 保証契約締結後の情報提供義務
(1)債権者は主債務者の履行状況に関する情報提供義務を負います(委託を受けた保証一般)。
主債務者の委託を受けて保証人(法人を含みます)になった場合、保証人が債権者に主債務の履行状況について問いあわせをしたとき、債権者は遅滞なく、これらの情報を提供する義務を負います。
主債務の履行状況について、保証人は密接な利害をもつため、問い合わせの必要があるからです。
提供義務を負う情報内容は、主債務の元本、利息 及び違約金等に関する
① 不履行の有無(弁済を怠っているかどうか)
② 残額
③ 残額のうち弁済期が到来しているものの額についてです。
(2)債権者は、債務者が期限の利益を喪失した場合、情報提供義務を負います(個人保証一般)。
例えば、債務者が分割金の支払を遅滞して結果、一括払の義務を負うことような場合を「期限の利益の喪失」といいます。
主債務者が期限の利益を喪失すると、遅延損害金の額が大きく膨らむ可能性があり、保証人が多額の支払いを求められる可能性もあります。
逆に、保証人が主債務者の期限の利益喪失を早く知ることができれば立替払等で対策をとることもできます。
そこで、本条が新設されました(458条の3)。
保証人が個人である場合、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したことを知った時から2か月以内に、その旨を保証人に通知しなければなりません。2か月以内の通知を怠ると、債権者は、個人保証人に対し、主債務者が期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金について請求できなくなります(もっとも、主債務者にはこの間の遅延損害金についても支払義務があります)。
例えば、債権者が期限の利益喪失を知ったときから2か月以内に通知せず、保証人に通知をしたのが期限の利益喪失後3ヶ月だった場合、3か月分の遅延損害金の請求を保証人にすることはできなくなります。
6 履行の請求について
改正法では、連帯債務の絶対的効力事由が削減されました(441条)。
①連帯債務者の一人に対する履行の請求は、絶対効ではなくなり、他の連帯債務者に対してその効力を生じなくなりました。
②連帯債務者の一人についての免除、消滅時効の完成も、絶対効ではなくなり、他の連帯債務者に効力が生じません。
連帯保証人についても、同様の改正がなされ、連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者に対して効力を生じません(458条、441条)。したがって、債権者が連絡保証人にのみ履行の請求を行った場合、主債務者には原則としてその効力が及ばないので、時効管理の関係で債権者は注意が必要です。
具体的には、連帯保証人にだけ履行の請求をするのではなく、主債務者にも別途、履行の請求をしておく必要があります。
主債務者の居場所が不明でも履行の請求をしたと同様の結果が生じる手続はございますので、その様な場合は、弁護士にご相談ください。

賃貸&保証に関する民法改正の落とし穴

家賃保証に関する民法改正
情報提供義務や通知義務の新設により、たとえば、保証人候補者は、保証人になって良いかどうかの見極めがしやすくなりましたし、保証人は、債権者への問い合わせにより主債務者の遅延損害金が膨らむ前に対策することができるようになりました。また、保証契約が無効になる場合も新設されています。このことは家主にとってもメリットはあります。
他方、改正民法による賃貸物件の家賃の保証人に対する情報提供義務や通知義務の新設により、収益物件のオーナー側は、家賃の保証人から債権を回収するためのハードルが高くなりました。

落とし穴を回避する対処法
対処法につきましては、事案によって異なり、やや複雑になりますので、弁護士にご相談ください。