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人生100年時代_資産活用と相続対策を学ぶ

土地建物に関する改正民法の注意点

建物建築の前に土地売買を検討する必要性

敷地の吟味なく建物を建ててしまうことのリスク
1 災害リスクが大きい土地と災害リスクが小さい土地
土地の災害リスクとは、地震による揺れ・地震による火災・津波・川の氾濫・台風等の高潮リスク・崖崩れ・液状化等であり、 土地には、このような災害リスクが大きい土地と小さい土地があります。
2 災害によるリスク
⑴ 地震による揺れ・地震による火災・津波・川の氾濫・台風等の高潮・崖崩れ・液状化が生じると、建物が倒壊・損壊・焼失・水没するリスクがあります。
⑵ 関東大震災や阪神淡路大震災級の地震・火災を想定した極めて高度の耐震性・耐火性を有するマンションを建設・買収することにより、かなりの程度、地震による揺れ・地震による火災をコントロールすることはできると言えます。しかしながら、そのようなマンションを建設しても、洪水・津波・高潮が来れば、水没するリスクがあります。
⑶ 賃借人から責任を追及されるリスク
賃貸用マンションやアパートが損壊すれば、賃借人に対し、修補「等」の責任を負い、賃借人は、オーナーに速やかに修補するよう要求すると思われます。
家主は、適時に修補をしなければ、マンションの賃借人らに対し、損害賠償責任を負います。
⑷ 土地&建物の値下がりのリスク
ハザードマップに明記されているとはいえ、その土地が、深刻な被害に遭えば、その記憶が残っている間は、その土地・土地上の建物を敢えて買おうとする人は少なくなり、土地と建物の双方が大幅に値下がりするリスクがあります。
⑸ 土地建物を売却する際の修補義務リスク
激しい地震による揺れ・地震による火災・津波・川の氾濫・台風等の高 潮・崖崩れ・液状化に遭った土地や建物は、建物が倒壊・焼失を免れたとしても、建物や地盤にダメージが生じている可能性もあります。
その際、「速やかに経済的に完全に建物の修理をなし得るシステム」を構築していれば良いのですが、そうでない場合には、激しい地震や洪水により、建物内部にどれだけの瑕疵があるか分からない建物と敷地を売らざるを得なくなり、後日、買主から修理や高額の損害賠償の請求を受けるリスクがあります。
⑹ 支払い不能のリスク
この先何十年も億単位のローンが残っているのに、修補できない、賃貸できない、売却できないのでは、建物建築のために投下した資本を回収できないばかりか、ローンの返済に窮する事態となります。
3 建物を建てるなら災害リスクの少ない土地を
政府の発表によれば、今後30年間の首都直下型地震の発生確率は70%であり、南海地震や根室沖地震の発生確率は80%にもなります。
温暖化の進行により、年々台風や大雨の被害は深刻になっています。
何億・何千万もの投資をして建物を建てるならば、あるいは建物と敷地を買うならば、災害リスクの小さい土地を厳選するのが好ましいと言えます。
記載した各リスクは、建物を建てる前、建物と敷地を買う前に災害リスクの少ない土地を厳選すれば、避けられるリスクです。
4 空室リスク
少子高齢化の進行により、若い賃借人は減りますが、高齢の賃借人は増えると思われます。
若い賃借人が集まる地域、高齢の賃借人が住みやすい地域でなければ、空室リスクが増加します。
5 債権法改正で重要になる土地の調査と評価
土地のリスクは、災害と空室だけではありません。
土地の価値・性質は、建築制限・道路幅員と道路の種類、埋蔵文化財と地中埋設物・土壌汚染、境界確定、土地の心理的瑕疵、水道下水電気ガスの状況等々によっても異なってきます。
土地の面積ですら、登記簿上の面積と測量面積にズレが生じる場合があります。
民法改正により、土地調査の過誤・不足のリスクは、一気に増大したと言えるでしょう。

正確に建物建築に適した土地か否かを調査・判断する
現在所有している土地、購入を検討する土地の双方について、以下の調査をすることをお薦めします。
1 不動産鑑定士による鑑定を実施すること
素人が災害マップを見てもある程度災害リスクは分かるでしょうが、その災害の程度やリスクの程度を正確に把握することは困難です。
ましてや法律上の建築制限・付属道路・土地の現場を初めて見て分かる土地の弱点等々は、熟練した優秀な不動産鑑定士でなければ、評価はもちろんのこと、もれなく「土地の調査」をすることは難しいのです。
少なくとも高額土地売買では、建築前・土地購入前に不動産鑑定をする必要性が高まりました。
2 測量すること
⑴ 簡易測量を惜しまないこと
登記簿の面積に誤差が多いのは常識です。土地の正確な面積が分からなければ、建築計画にもズレが生じます。
⑵ 確定測量をすること
周囲の境界の確定を含む確定測量は、100万円前後以上の費用がかかりますが、境界も確定せずに売買契約や建築を始めるのはリスクがあります。
3 空室リスクを徹底的に調査すること
不動産鑑定士、信頼できる複数の熟練の不動産事業者(宅地建物取引士)の意見を十二分に収集しましょう。

土地の売主の立場で

債権法改正に伴う「土地の」売主の責任
改正債権法562条では、売買の目的物である引き渡された土地について、契約成立前後を問わず、種類、品質又は数量(面積)に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、契約不適合に売主に故意過失がなくとも、目的物たる土地の修補・不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます。
しかも、契約内容に適合する土地を引き渡すことや修理・追完が、全くもって不可能な場合であっても、売主は、民法416条に基づく広い損害賠償義務を負います(412条の2)。

宅地建物取引士の重要事項説明と土地の売主の責任の関係
⑴ 売買契約(不要式契約)は口頭でも成立します。
⑵ 売買契約書を作成した場合であっても、契約書に売買契約書記載以外の合意は効力がない旨明記しない限り、売買に関し口頭でなされた合意も売買契約の内容となることに注意が必要です。
⑶ 売主が委託した仲介業者が、売買の売買の目的物の重要事項説明をする(宅地建物取引士)ときは、特に注意が必要です。
⑷ 宅地建物取引士は、買主に対し、売買の目的物の「重要事項」に関する説明をします。
⑸ 重要事項説明書の記載事項は、別紙のとおりです。
なお、重要事項説明以外の事項で、不動産会社の従業員が、買主の質問に対し事実に反することを答えてしまうリスクもあり得ることです。
(別紙:重要事項の説明書 宅地建物取引業法第35条_pdf)(2019年6月現在)

宅地建物取引士のミスに起因する売主の責任リスク
そうすると、宅地建物取引士がした重要事項説明は、売買契約書に記載されていなかったとしても、「売買契約の内容」の一部をなす、と扱われる可能性があります。
重要事項説明書の記載が、真実と異なっていた場合、売主は、契約内容不適合責任を負うリスクがあるのです。

土地の売主が会社である場合の会社役員の巨大責任リスク
1 会社の取締役の経営判断ルール
会社の取締役は、会社の経営をするに当たり、
① 当該取引の損得を判断するのに十分な情報を収集した上、
② 取引時の状況に照らし著しく不合理な判断に出ない限り、
会社に対し、損害賠償責任を負いません。
2 土地の売買に関し取締役が会社に責任を負う場合
逆に言えば、取締役が会社を代表して土地(建物)を売却して、その結果会社に損害を与えた場合、取締役が売買契約時までに、当該土地の売買のメリット及びリスクに関する十分な情報を収集・分析していなければ、取締役は、会社に対し損害賠償責任を負うリスクがあります。

重要事項説明ミスをした宅地建物取引士(不動産会社)と一蓮托生の運命とならないためには、
土地の事前の十分な調査に加え、土地の売主の立場での契約書の工夫が必要となります。
弁護士にご相談ください。

土地の買主の立場で

宅地建物取引士のミスに起因する土地買主の莫大リスク
例えば、宅地建物事業者(宅地建物取引士)の説明に誤りがあり、計画していた建物が建たなかったり、 重要事項説明書に記載のない土壌汚染や水害リスクが発覚する等して、土地の時価が売買代金を大幅に下回ることが判明した場合、 買主は、莫大な損害を被ることになります。

高額土地買取で、重要事項説明ミスをした宅地建物取引士と一蓮托生の運命とならないためには、
土地の事前の十分な調査と、土地買主の立場での契約書の工夫が必要です。
弁護士にご相談ください。

土地の買主が会社である場合の会社役員の巨大責任リスク
取締役が会社を代表して土地(建物)を買収して、その結果会社に損害を与えた場合、取締役が売買契約時までに、当該土地の売買のメリット及びリスクに関する十分な情報を収集・分析していなければ、取締役は、会社に対し損害賠償責任を負うリスクがあります。
これを回避するためには、①不動産会社、②測量、③不動産鑑定を併用して、土地の性能について予想外の事態を避ける必要があります。