元赤坂法律事務所 オフィスイメージ

人生100年時代_資産活用と相続対策を学ぶ

節税のためのマンション建築のリスクと対策

お金を払ったのに建物が完成しない

〔事例〕
施主は、従前から懇意にしていた取引先の工務店にアパート(耐用年限30年程度)の建築を依頼して、代金の半額を先払いした。 ところが、基礎工事が完了したところで、工務店の経営が悪化して工事がストップした。
施主が工務店の社長から事情を聴いたところ、残代金を早めに払ってくれたら下請会社に支払いができるので、残代金を早めに払うよう懇願された。
施主は、弁護士から止められたにも拘わらず、残代金の一部を払ったが、工事は一向に再開されなかった。

〔対策〕
もちろん、施主は、工務店に対し、民法上、工事を完成させるよう要求でき、工事遅延に基づく損害賠償や請負契約の解除をなし得ますが、工務店が夜逃げ寸前であれば、民法上の手段では、救済が不可能ないし著しく困難となります。この施主の方にとってはもはや仕方がないことですが、これから建物を建てる場合は、十分な資力のある建設会社に依頼をすることをお勧めします。

完成したマンションに多くの欠陥がある

〔比較的幸運な事例〕
施主は、娘婿の取引先の工務店に3階建ての事務所兼マンション(耐用年限30年程度)の建設を依頼した。ところが、完成後しばらくして1階の事務所の床全体に凹凸ができ、歩くたびに床に足がめり込む事態となった。
施主は、別の工務店に依頼して原因を究明。1階床の設計図を書き直して貰い、弁護士に交渉を依頼し、工務店に1階床の修補をさせたが、2週間程度の休業を余儀なくされた。修補は無償であったが、工務店が娘婿の取引先であることもあり、休業補償等の拡大損害の賠償までは要求しなかった。

〔対策〕
完成した建物に欠陥がある場合、民法上、施主は、建設会社に対し、欠陥の修補や修補に代わる損害賠償を請求することができます。ただ、欠陥の立証は容易ではなく、欠陥が多いと裁判に時間を要し、弁護士費用も高額なものとなります。元来、欠陥を連発する建設会社は、賠償資力が乏しいのが一般的で、仮に裁判に勝訴したとしても、工務店に賠償の資力がなければ、弁護士費用を払うだけの結果となり、施主は、非常に悔しい思いをするだけではなく、人生設計の根幹に重大な影響を受けることになります。
もとより、素人が手抜き工事を見抜くことも、素人が手抜き工事をされないように現場を監視・チェックをすることも殆ど不可能です。 建築の素人たる施主としては、「欠陥を出さない」ことはもちろん、「欠陥を心配する必要もない建築会社」に依頼するのが安全な方法です。

マンションが劣化し易く修補の負担に耐えられない

〔事例〕
先代から古いマンションを数棟相続した相続人は、計画的にマンションを修補しなければならないとの知識がなく、修補費用の積立もしなかったため、マンションの修補やリフォームは、必要に迫られたときに、内装業者や不動産管理会社の言い値で、修補することになり、不動産賃貸業は赤字続きであった。 そのため、耐用年限が長くはないビルの耐用年限が更に短くなり、外観上も老朽化した汚いビルとなって、更に空室が増えたが、賃借人がいる以上欠陥を修補せざるを得ない。 しかも、まだローンは、完済されていない。相続人は、自分の給与から修補費用を填補し、ローンの一部を支払う事態となり、「こうなると知っていれば、相続放棄をしたのに…」とマイナスの物件を相続したことを後悔した。

〔対策1〕
漫然と放置して赤字を拡大させることは禁物です。まずは冷静になり、順序立てて合理的な判断をしましょう。 まず、大事なのは、赤字マンションないしその敷地を売却するか、収益源となるマンションに建て替えるかの判断です。素人的判断は禁物ですが、マンションの立地が、駅から遠い、人口減が見込まれる等、今ひとつの場合は、マンションを売却する方向で考えます。 売却する場合、複数の信頼できる専門家に相談して、建物を解体して土地のみ売却するか、建物と土地を売却するか、を判断します。 物件を売却する場合、入札方法を工夫するなどして、できるだけ高値で物件を売却して換金します。

《ポイント》
* 赤字が膨らまないよう、できるだけ不良資産の処分を急ぎます。
* 但し、処分を急ぐあまり、物件を時価より大幅に安価に売却しないよう冷静に対処します。

〔対策2〕
マンションやアパートを建て替える場合、賃借人の方に退去して頂きます。 ここで対応を間違えると、明け渡しまでに長期の裁判を要することになりますので、専門家と対応・作戦を十分に練りましょう。 一度マイナスのマンションに苦しんだ以上は、今後は、耐用年限の長い、堅牢で修補の必要の少ない「収益源となるマンション」を建築するようにしましょう。

マンションの性能・品質が今ひとつ

〔事例〕
施主は、東京近郊の駅から7分程度の立地に、マンションが2棟建つ敷地を所有している。その敷地の半分は「空き地」で、残り半分には老朽化した「店舗兼住宅」が建っていた。
施主は、老後の収入と将来の相続対策として、建築会社B社に依頼して、「空き地」に1棟、「店舗兼住宅」の明け渡し後にもう1棟、合計2棟の2階建てアパートを建てることを計画した。
まず、施主は、B社に依頼し、30年ローンを組み、「空き地」に耐用年限30年のアパートを建設し、B社に一棟貸し(サブリース)を行った。完成時に見つかった幾つかの瑕疵は、施主の要求により、速やかに修補された。
施主が、義理の母をB社のアパートの1室に居住させたところ、隣室の住人の声で不眠症になってしまった。加えて、湿気が異常に強く、衣類等にカビが生えてしまう状態になった。
施主の妻が、「店舗兼住宅」後の敷地に、B社に依頼してもう1棟アパートを建てることに反対したため、建設会社を厳選し直し、A社に依頼して、耐用年限60年の堅牢な3階建てのマンションを建設することした。
施主夫妻は、A社の品質に満足するとともに、A社とB社のあまりの品質の差を知り、1棟目をB社に依頼したことを深く後悔した。

〔原因〕
施主夫妻が、相続対策等でマンションアパートの建設を思い建った後、最初に訪れたのがB社の営業担当社員であった。 そのB社の営業担当がとても良い人物に見えたため、施主は、その営業担当を全面的に信頼し、耐用年限や工法・建材の吟味をしないまま、B社に1棟目のマンションの建設を依頼した。

〔対策〕
1棟目をB社への依頼したことを深く後悔したとしても、過去に戻ることはできません。 このような後悔をしないために、これから、高齢の備え・相続対策でマンション建設を検討されている方は、「安心して賃貸マンション建設に踏み出すための7つのご助言」を参考にされることをお勧めします。

マンションが空室だらけのリスク

〔事例〕
空室が多い事例には様々な原因がありますが、比較的共通するのは、① 実際の築年数に関係なく、 外観が薄汚く見え、住み心地も今ひとつであるのに、家賃が、近隣の新しく高品質に見えるマンションと大差ないケース、 ② 駅から遠い物件、 ③ 室数が多すぎる物件

〔原因〕
① 人口減高齢化の進展 (駅から遠いと高齢者には負担) ② 建物が劣化し易い品質である。③ 家主に劣化を防ぐ意欲もノウハウもなく、メンテナンスや建物を綺麗にする努力をもしていない。

〔対策〕
30年後も、1億人に近い多くの方が我が国に居住しています。 30年後も、東京近郊の駅の近くには大勢の賃借人の方がいるはずです。 東京近郊の駅の近くに、規模は小さくとも、10戸や8戸、2戸でも、多くの方が「こんなマンションに住んでみたい」と思う品質のよいマンション、今後増える高齢者の方に優しいマンション等、競争力の高いマンションを建てることができれば、空室リスクをおそれる必要はないと考えます。

災害のリスク

〔事例〕
1億円の中古アパートを高い金利のローンで購入したところ、東日本大震災で建物が傾き、全壊状態となった。
全壊状態から、約2000万円をかけて建物の傾きを修補したが、賃料を減額しなければ空室が埋まらない事態となった。

東日本大震災は津波と建物倒壊が目立ちましたが、阪神淡路大震災、関東大震災では、火災の被害も甚大でした。
温暖化の進展とともに、河川や崖崩れの水害リスクは年々高まっています。30年後の温暖化・水害リスクはどのようなものでしょうか?

〔対策〕
津波や水害の心配のない立地に、地震にも火災にも強い建物を 立てることが重要です。 建築したマンションが、震度7に耐えることができたとしても、隣家からの火災であっさり延焼してしまうのでは、災害対策として極めて不十分であると言わざるを得ません。 マンション入居者様のかけがえのない生命を守るためには、地震対策と火災対策は、車の両輪です。

マンションの耐用年限が短い

〔事例〕
世の中に非常に多いのは、30年ローンで耐用年限30年の住宅やアパートを建設する事例です。
そうすると、建物建設から30年後に物件を売却する場合、物件を土地だけの価格、下手をすると更地価格から解体費用を控除した価格で売却することになります。
また、そうすると、建物を売却しない場合、耐用年限を超えた建物で賃貸経営をするか、30年後に建物を解体した上、再度物件を建築することになります。つまり、60年間でマンションを2回建てることになります。

〔原因〕
この世に耐用年限60年のマンションが存在するのに、30年ローンで耐用年限30年のアパートを建てる原因としては、おそらく、 前述のように最初に出会った建設会社の営業担当社員の言うがままに、耐用年限を全く考慮しないで建設を依頼したか、 見かけ上の建築価格だけを比較して決めたから、と推測されます。

〔対策〕
建物の建築価格を比較する場合、見かけ上の建物建築価格だけではなく、後述するとおり、耐用年限1年毎の建築価格、想定される修補費用の金額、建物の品質競争力(空室リスク)を総合的に比較検討する必要があります。
特に耐用年限30年のマンションと耐用年限60年のマンションの価格を比較する場合、「耐用年限30年のマンションの建築価格の2倍+解体費用」と「耐用年限60年のマンションの価格」を比較して冷静に考えてみることが有益ですし、そもそも、その耐用年限30年の品質のマンションで少子高齢化の競争に勝ち残れるのかを検討することも大切であると考えます。

却って損をする建物を子供に相続させるリスク

〔事例〕
世の中には、劣化して競争力に乏しく修補の手間と費用ばかりかかる儲からないマンションやビル、損をするマンションやビルを相続して、費用の面でも、手間暇の面でも、気苦労の面でも、非常に苦しむ相続人の方がたくさんいらっしゃいます。
先代は、不動産の経営に長けており、工夫を重ねて古いビルで収益をあげることができたとしても、相続人は、不動産の知識ゼロ、商売というものをした経験すらないケースも多いのです。
相続人は、知識のないまま右往左往し、儲からないどころか、建物の修補等のため、大きな損失を出すこともあります。

〔対策〕
高品質のマンションの建設としっかりしたサブリースの運営は、不動産の知識のない高齢者の方や相続人の方が、「マンションを収益源とする」ための車の両輪です。
そこで、マンションを建設する際、遠い将来までサブリースの計画がしっかりしているかも、十分検討する必要があります。 そうすれば、大切な御家族が「却って損をする建物」を相続するリスクを解消でき、遠い将来まで御家族から感謝される物件を残すことができます。